TORABARA ながつき1日

夜中に目が覚めてしまった。わたしが数日前に、引き受けてもよいと返事をした仕事について、思うところがあったから、不安定な感情に襲われたような目の覚め方。

損得で考えれば、誰からも敬遠される仕事。面倒臭くて、安価。ただ、わたしにとって、この業界への思い入れがあるのだ。支えるのはわたし。この思い込みがいつ形成されたか。

最初に仕事したとき、やっとありついたとおもった。私にとって、この仕事をしていることこそが「まとも」だと、おもった。そののち、まるで私が選手のような、活躍を期待される扱いが、しばらくつづいたとおもう。

徐々に、その想いは挫かれる。ろくな機会にめぐまれなくなり、ここ4年くらい空白にもなってた。おばちゃん同士のしがらみに太刀打ち出来ない。モラルの低さ、濁った井戸に頭を突っ込んで、拙い言語を遣って喩え話をし続けているような群れ。業界の帯びる特質。これが鼻についてしまった。

個人でこの仕事を切り盛りしたい、巨漢の女が、わたしの予定を先ず確保してきて(1カ月間を丸ごと空けた)その内の6日間だけ仕事があるからとわたしを稼働させ、六万円だとのこと。人様の時間を1カ月空けさせたことに見合う金額は、果たしてそれで済まされるのか。はちがつのできごとだったのだがしはらいがじゅうにがつだった。わたしは支払いがあるまで、しつこく催促を入れた。これは辛かった。協力し合って仕事がおわったら敵。踏み倒すなよてめえ。と、首の根をつかむようなことをこちらがしている。

巨漢は往生際が悪かった。せびりとる腹つもりがあったのだろうか。お金の意地汚なさはまずい。非はこちらにあるのか、出来が悪くて支払ってもらえないのか。このような念を人様にいだかせたことは無礼だ。人様の時間を拘束し、人様に指示を与えたことに対して、報酬は即座に払え。気持ち良く払え。それを後出しジャンケンで渋るようなまねが卑劣だ。彼女の渋りは、使われてるしかない側が弱い立場であること、を、あけすけにした。ひとを欺く、典型的なパターン。

この出来事は、床が抜けそうな巨体が、食欲が暴走してその体になっていることへの嫌悪感に、変換された。横暴な金銭欲とのごった煮。暴走する欲望に歯止めが効かない、奇形なのは、おまえの心だ。脂と血行が行き届くらしく、髪と肌の艶がグロッシーだった。金まわりのよさを見せたかったのか、高級なドライヤーを持っている。と自慢されたっけ。その部屋に揃っている戦利品の家具や冷蔵庫、ははん、そのデザイン、流行ったやつだよね、すら賤しく、煮えたぎらせた欲で鬼の島(そやつの部屋)に辿り着いてる。

腹がどす黒い、いけすかない奴は、早いところ滅ぶものだよ。と、近所の老人は言いました。

ところで、これら、業界で起こった出来事も乗り越え、またしても、業界からわたしを頼る声に、ほいほいと返事をしている。今度の相手は、大手さんなので、支払われない心配は無いとするけれど、おそらく条件が良くないから、やる人がいない、そして古巣のわたしにお鉢が回ってきている。労をいとわず、衣裳を直しました、裾上げ、一周して600円ね。とか、2時間かかったことは薙ぎ倒される、このかんじ。自省を促されるここちがして、なんかダメなところを言われて、これが仕事です。みたいなやつ。

使われる側の体験がいつまでつづくか、20代のときに修行だから歯を食いしばってきた、同じ内容がまた来る。また取り組む。どこへも行っていないわたし。担当の人との受け応えはぎこちなく、こちらがひれ伏すみたいな形しか、ここにはないような、このことが限りなく哀しい気配になって、突如、夜中に目が覚めたりしたかも。

なつかしくもあり、シャレになってるって気分もある。優しい気持ちがわたしに残っているのでやると言った。とらわれ、の内にいることを、自覚している。