雲の形をした、お札をたてかけておく〝札立て〝を壁に取り付けた。ひと区画の居室に、お札を束ねて前後に重ねるのは、良くないらしい。重ならないように横に並べられる雲。を用意したというわけ。
そしたら、お札がイヤイヤをするみたいに、桟の溝に横たわって倒れてしまった。これを指でつまみ出そうと苦闘したのち、ものさし。で掻き出してみる。この動作の途中で、スルスル、と。壁を伝ってお札が滑って床の方へいく音がする。床に付くのは、これまた良くない。から慌てて、ああ、もう床に落ちたか、と物を除けて床を探すのだけどお札は無くなっていた。
え?消えた?
どうやら、壁の壁紙である表面は、薄い板になっている。真うしろ一面に、隙間の空間があるようだ。ここに潜り込んだらしいこと。
洪水しないために、美しいむすめを人柱にして川の側面に埋める。昔の強力なおまじないは、なんとおどろおどろしい。永久にはさまったお札は、壁を守り抜くため、壁に納まったのか。
壁からはなたれる輝きで、お部屋が明るくなったとおもうのは気のせいか。お部屋の建て付け、壁が何重になってるやら隙間が存在しているなんて、知らない。それこそ、神隠し。消えた。すがたくらまし。意志を持って、そこへ入っていったかんじ。となりのお札と並ぶのがイヤイヤ。
いずれにせよ奇異な出来事だった。