家の外に出かける方のひとが、家の中に残ってるひとに、かぎしめて。と言ってるのが、だきしめて。と聞こえて、えっ。と耳をすました。なにやらささやくようにしゃべっていた。
通りすがりの人たちの会話が、ふいに聞こえてきて、救われるような日だった。まいしゅう、しゅっきんのたびに、なんだかな、じぶんの影だけが、そこにいるんだかいないんだか。
6じ。しごとを終えた人々が町に散ってゆくとき。カップルの女が、さっきまでほんと何にもしゃべってない、ショクバだと、はいー、くらいしか口をきいていない。と、男に、せっせとしゃべっている。歩きながら電話してる、ドカンズボンをはいた男の人、ショクバは今のところなんとか耐えられるよ。と言っていた。
うん、うん。
それはわたしの声かもしれないこと。自分にとって十全な時間が、だれのうえにもありますように。