TORABARA☆旅のこと

美しい道

呼ばれていたね~という旅のことを思い出していた。

その日は、いっしょに行くことになっていたひととはぐれて、しかしそのひとはそんなに行きたがっていなかった。わたしひとりで行った。山に。

わたしは目が悪くて、メガネを忘れていることに気がついたけど、かまわない、という気がした。とにかく、行く。

ケーブルカーが工事しているとかで、人はまばら。山にしがみつくように、かいだんにもへばりつくように、登りまして、参拝いたしまして、下りてきた。山が、おつかまりなさいといっているように、ほいほいとわたしをはこんでいるように感じた。体が丸ごと浄化されたようなたいけんだった。その山道で、野生の鹿もいて、その日は、そういう日。

見えるかどおかに不自由しなかった。触覚もつかって、山といったいになって、登った。素手で、ふいにさわったコケが、やさしくてやわらかくて、鮮烈に、コケの生命とふれた、と思った。

こどものころのからだかんかくが、よみがえっていた。のびやかにあそぶようにからだをつかっていたよね。

山は、わたしを招いて、ヒントをくださったのかも。ありがたい。

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